寺の沿革並びに寺の紹介

通称金鑚大師、元三大師といわれている当山は、聖徳太子の創建で舒明天皇（629～641）の勅願寺と伝えられている。平安初期に仁明天皇の御代（833～50）伝経大師最澄の高弟慈覚大師円仁が入山、本尊に十一面観音を安置して天台宗の寺とし、金鑚山一乗院大光普照寺と名づけて開基となられた。初期天台の後援者は群馬県鬼石町の浄法寺や栃木県岩舟町大慈寺に関係する道忠禅師とその門下であり、円仁もその１人として第３代の天台座主となられ、天台教学を確立された方である。

その後平安中期になると第18代天台座主の元三慈恵大師（911～85）の御溜錫があり、ご自作の尊像を安置されたので元三大師の寺として世に知られるようになった。鎌倉時代中古天台といわれる時代になると、元三大師の高弟である恵心、覚運による恵檀両流の教学中特に恵心流の教学が、寛元年中（1243～47）河田谷（桶川市）の泉福寺の中興信尊によって伝えられた。その弟子尊海は仙波（川越）無量寿寺を中興され、さらに弟子の寛海が北院（喜多院）、全海が中院を、盛海が長沼の宗光寺（栃木県二宮町）、豪海が当山に談林を開設した。（御伏見天皇御代1298～1301）これが関東三談林といわれ、江戸時代に寛永寺が創建され、歓学講院が開設されるとその傘下となる八箇檀林と拡大発展し、多くの僧侶を養成する学問所となったのである。

当山は武将による信仰もあり、永承５年（1050）源義家東北征伐の戦勝祈願に霊験あり、寺領３千石と諸珍宝（現在神社々宝）を賜わった。下って戦国末期の永禄13年（1570）には御嶽城主長井政実から３貫文・鉢形城主北条氏邦より５寛文の寺領寄進があり、また徳川家康より天正19年（1591）11月に御朱印30石の寺領を賜わり大いに隆盛を見た。しかしその反面戦火もあり、天文21（1552）２月11日に小田原城主北条氏康と上杉傘下の安保氏との合戦で御嶽城が落城し、全山が焼失、唯一残ったのが天文３年（1534）建立の邦の重文多宝塔である。失火では、元禄11年七堂伽藍を焼失し、文化５年（1808）再建され、明治18年元三大師９百年御遠忌を記念して瓦屋根、さらにっ平成４年本瓦葺屋根に模様替えしたのが現在の本堂である。

金鑚神社との関係は源義家の戦勝祈願や、摩訶止観伊賀抄に永徳元年（1381）11月26日始之、金鑚宮談所とあり、神仏習合によって別当寺であったことが、あったことが明らかである。それが明治元年（1868）神仏分離令によって分けられ、第57世金鑚広貫の弟子詮量房（立川円平）が複飾の上児玉大学と改名し、初代の神主となった。なお、天文３年（1534）安保弾正全隆によって建立された国の重要文化財である多宝塔は、明治22年(1889）７月11日付で埼玉県庁の依頼によって神社へ譲渡したのである。

環境と施設

境内は約66,000m²（２万坪）、展望この上なき見晴らし台あり、上毛三山、関東平野を一望できる。春は桜花とつつじに色どられ、初夏はさつき、盛夏は青葉に境内の涼風心地よく、秋は紅葉と四季の景観は殊に美しく、埼玉県立上武自然公園に指定されている。
建物は約2,0000m²（600坪）あり、山門、鐘楼、薬師堂、稲荷社、水屋、礼状など個々の建物とは別に本堂、書裡、書院、大広間、照隅殿（ホール、事務室、宝物館、書庫）その他の建物を有する。

墓地は金鑚大師霊園と称し、2,6000m²で220区画あり、５0m²、６0m²、100m²の３種類からなっており、日当たりのよい南斜面につくられている。

年中行事

寺宝

経典

鉄眼版一切経初版、（了翁禅師寄贈）、大般若経、金色金泥法華経

古文書

御嶽城主長井政美寄進状、北条氏邦印判状、僧正口宣案、下文、天界大僧正補任状、（以上町指定文化財）、談林関係文書、元三大師略縁起、金鑚大明神本社再建勧進帳、多宝塔修理勧化帳

欄間彫刻

司馬温公、十六羅漢、二十八部衆、天井画、合天井須輪

障壁画

三国志、唐獅子と牡丹、恵部札寿戸山群（六郎田天鈴画伯作）

掛軸

両開曼荼羅図（町指定）群盲観像図（蕪村図）等、絵馬、酒呑童子

現在は厄除大師の寺として知れわたり、初詣の参拝者は県下３位の座を占め、３日のだるま市は特に有名である。また霊場では児玉33霊場の第33番札所、関東百八地蔵霊場の第８番札所ともなっている。